癌の治療用のベルトコンベアに乗ることを決心した私ですが、いくつかの治療の方針を選ばないといけない。その決断は自分自身でしなければならない。

私にとっては大きな大きなハードルでした。

 

初めに、その病院チームの一番偉いM先生の説明。
『癌の治療の方法は、子宮を温存する方法。子宮内の癌の部分をこそげとって子宮は残す』
はじめは思わずそんな手術方法があるのかとよろこんだものの、
しかし必ず2年以内に再発することなど。
ただ、子どもが産める可能性がゼロではない。

 

そして、慶應大学と、ここでしかしてないとか、
これまでの5年間に20件ほどその術式で手術し、うち2件の妊娠。
でも出産には至らなかった。しかも妊娠期間の全てをベットの上で絶対安静と。
その方法がファーストチョイスのような説明、と私は感じました。

 

社長も一緒に聞いてもらいました。あの時、社長が一緒でなかったら・・・、
子宮を残せるという部分の説明しか頭に残ってなかったと思います。

 

一旦帰って、かかりつけ医の小野先生に相談し、
先生のお友達の関東圏で同じ規模・立場の病院の婦人科の先生方に相談してもらったりしました。
そして「その方法は学会発表をされているのは知っているけど、命を守る為には子宮は全摘出をすすめる」といわれました。

 

いのちが大切。

できるだけ子宮は残したいと思う気持ちは強かったのだけど、
2年後再発してこの世に自分はいないかもしれない…。

子宮を全摘出することに決めました。

 

しかし、執刀は説明者のM医師ではなく、担当者のT執刀医師がしてくださることになり、
内心ホッとしました。

 

そのT先生に「私が先生の娘ならどうされますか?」と聞きました。
答えは「子宮を全摘出する。それでも生きてほしいから」でした。

 

同じ医局の中で本音を言っていただき、そこで私の迷いはふっきれました。
そしてそのT先生のもとで治療を受けることにしました。

 

化学療法や手術の方法、切除したがん細胞付きの臓器をその後どうするのか、
輸血をすることもあるかもしれない場合の説明を受けて承諾書にサインをしました。

 

全身の力が 抜けて ペンを持つ手が だんだん震えてきて 名前を書くのもやっとでした。